薬剤師に聞く!更年期のホルモン補充療法(HRT)

更年期には、ホットフラッシュや発汗、イライラ、気分の落ち込み、関節や筋肉の痛み、不眠など、さまざまな症状があります。婦人科では、一般的にホルモン補充療法(HRT)や漢方薬を処方されます。今回は、ホルモン補充療法について薬剤師の辻恵美先生に伺いました。

ホルモン補充療法(HRT)について


Q. ホルモン補充療法は、どのような治療法ですか?
ホルモン補充療法(HRT)は、更年期以降、急激に減少する女性ホルモンを補う治療法です。更年期症状の原因になりやすいのは、実はホルモンが減少すること自体ではなく『急激に減少すること』なんです。ホルモン補充療法では月経が順調だった頃の1/3程度の少量のエストロゲンを補う事で、この急激な減少のカーブを緩やかにし、症状を緩和します。

 

Q. ホルモン補充療法にはどのような効果がありますか?

・更年期症状をやわらげる

ホットフラッシュ(汗やほてりなど)や膣粘膜の潤いなどには早期に効き目がでやすいと  いわれています。そのほか、不眠やイライラなどの精神症状、ドライマウスやその他の症状にも効果が期待できます。

 

・閉経後の健康維持、生活習慣病の予防 

エストロゲンには血管をしなやかに保つ、悪玉コレステロールを下げる、血糖値のコント  ロール、骨量の維持などの働きがあります。閉経後はこれらのはたらきが急激に減るため、骨粗鬆症や動脈硬化などのリスクが高まりますが、ホルモン補充療法を行うことでそれらの予防につながると言われています。

Q. ホルモン補充療法は、いつ始めればいいのでしょう?
閉経前、閉経後早期(5年以内)に開始することが推奨されています。

また、中止も再開も可能なので、症状が気になる方は試されるのもよいかもしれません。

主にエストロゲンを投与しますが、ホルモンはバランスも大切。子宮のある方は基本的に子宮体癌の予防のために黄体ホルモン製剤を併用します。

 

Q.ホルモン補充療法の注意点はありますか?

希望する全員が受けられるわけではありません。

HRTが受けられない人

・乳がん、子宮体がんも経験者、または治療中

・血栓症になったことがあるなど

場合によっては受けられない人

・喫煙者

・コントロールできていない糖尿病や高血圧の方など

受けるのに注意が必要な方

・子宮内膜症、子宮筋腫、子宮腺筋症にかかったことがある

・血栓症のリスクがある(肥満や喫煙、生活習慣病など)

・60歳以上、または閉経後10年以上たっているなど

現在治療中の病気がある方は医師とよく相談を。

また、乳がんリスクを心配される方もいらっしゃいますが、現在ではHRTを受けていない方と比べて有意にリスクが上がるとは言われていません。 

教えてくれたのは…

辻恵美先生

薬剤師 / ちぇぶら更年期ライフデザインファシリテーター

薬剤師歴25年。内科・耳鼻科・整形など様々な薬に携わったのち、個々に寄り添える薬剤師を目指し、現在は婦人科医療と在宅医療に力をいれた薬局で勤務しています。その中で、更年期について多くの方に知識と情報を伝えたいと思い、ちぇぶら更年期ライフデザインファシリテーター、OATHAS女性の健康アドバイザーを取得。これからも薬も含め、たくさんの選択肢を伝えられる薬剤師として多くの方に寄り添っていきたいです。日本中、世界中の方の笑顔が増えますように。