更年期には、ホットフラッシュや発汗、イライラ、気分の落ち込み、関節や筋肉の痛み、不眠など、さまざまな症状があります。婦人科では、一般的にホルモン補充療法(HRT)や漢方薬を処方されます。前回の「ホルモン補充療法(HRT)」の記事に続き、今回は「漢方薬とサプリメント」について薬剤師の辻恵美先生に伺いました。
更年期と漢方薬について
Q. 更年期に漢方薬を使うことで、どのような効果がありますか?
漢方薬は気(き)・血(けつ)・水(すい)のバランスを整えます。更年期症状では主に気と血のバランスを改善する効果があるもの、また実証・虚証など、その人の体質も考慮して選ばれます。
イライラやうつ状態、倦怠感、頭痛など多くの不定愁訴を全体的に底上げする効果があります。10ある不定愁訴が0になるのではなく、6〜7に減った実感があればOKです。
一般的な漢方薬は生薬をいくつか組み合わせて商品化されていますが、漢方医などは生薬から選び煎じて個々に合わせた漢方を処方します。
まずはドラッグストアなどに売っている市販の漢方薬から試すこともできます。
Q. 漢方薬の注意点があれば、教えてください。
漢方は作用が緩やかで使いやすく、安全性が高いですが、もちろん副作用もある事をお忘れなく。用法用量はきちんと守りましょう。
同じ症状でも体質によって選ぶ漢方が異なるので、自分にあった漢方を選ぶことが大切です。 商品が異なっても同じ生薬が入っていることもあるので、併用には十分注意が必要です。
店頭にて自分で購入する際は、薬剤師や登録販売者に相談することをお勧めします。
Q.ドラッグストアなどでも漢方が市販されていますが、処方される薬と市販薬の違いを教えてください。
処方薬は医師が診察し処方されるのに対し、市販薬は薬剤師や登録販売者に相談し、自分の判断で購入できるため、安全性の面から含有量が処方薬より少ない漢方がほとんどです。
Q.更年期用サプリメントも多く売られていますが、選ぶ際のポイントを教えてください。
サプリメントは症状の改善というよりは、健康の維持促進のために摂取するもので、足りない栄養素を補給するためのものです。
それを踏まえて、摂るサプリメントを考えていくといいと思います。
例えば更年期用サプリメントと言えばエクオールがあります。エクオールはエストロゲンに似た構造を持っており、女性の健康と美をサポートしてくれます。
また、同じ成分でも多くの会社から商品が出ているので、安全性や、製造過程の管理や品質が保証されている会社のものを選ぶことをお勧めします。
飲みやすさや金額的にも継続可能なものを選ぶことも大切です。
Q. そのほか、更年期に気をつけることはありますか?
血圧やコレステロールの数値の上昇、その他の体調不良がでてきたら、まず内科受診を考える方が多いと思います。ただ更年期世代の方には婦人科受診をお勧めします。婦人科受診はハードルが高く感じる方も多いと思いますが、ホルモンバランスの乱れからくるものであればすぐ薬を飲む必要性が少ない場合もあるので、その点を熟知した婦人科のかかりつけ医をもつと心強いと思います。
Q.更年期を快適にすごすために、日常生活で気をつけた方がいいことはありますか?
食事・睡眠・運動です!
更年期を境にエストロゲンという守り神がぐっと減るため、生活習慣で補う必要があります。若い時と同じ生活をしていてはダメというのもきちんとした理由があるんですね。
食事はバランス良く。そして、たんぱく質・炭水化物(糖質)・脂質の3大栄養素と更年期以降に必要なビタミン・ミネラル(カルシウム、ビタミンD、ビタミンC、ビタミンA、ビタミンEなど)を中心に摂る事も大事です。
睡眠をしっかりとると、若さをキープする成長ホルモンが分泌されたり、 ストレスホルモンであるコルチゾールが低下します。適度な運動は自律神経を安定させます。また、筋肉もつきますから、尿漏れ、子宮脱などの予防のために骨盤底筋を鍛えていきましょう。
Q.最後に読者の方へのメッセージをお願いします。
更年期という時期は皆に平等に訪れます。その時期をどう過ごすかは自分次第。
自分らしく更年期以降も過ごしたいと思いませんか?そのためにはまず知る事から。
更年期の仕組みやケア・対策などを正しく知って、そしてその中から自分に合ったものを選択することが大事です。
ぜひ、薬も選択肢の一つとしていただきたいです。そして『薬を飲んでいるから大丈夫』ではなく、HRTや漢方を一つの手段として上手に利用し、ご自分の心と体を見直すきっかけにして頂けたらいいなと思います。
みんな違ってみんないい!更年期もね!
HAPPYな人生をみんなで楽しみましょう!
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教えてくれたのは…
薬剤師 / ちぇぶら更年期ライフデザインファシリテーター
薬剤師歴25年。内科・耳鼻科・整形など様々な薬に携わったのち、個々に寄り添える薬剤師を目指し、現在は婦人科医療と在宅医療に力をいれた薬局で勤務しています。その中で、更年期について多くの方に知識と情報を伝えたいと思い、ちぇぶら更年期ライフデザインファシリテーター、OATHAS女性の健康アドバイザーを取得。これからも薬も含め、たくさんの選択肢を伝えられる薬剤師として多くの方に寄り添っていきたいです。日本中、世界中の方の笑顔が増えますように。